ソニーフィナンシャルグループ(8729)のIPO情報と初値予想【板中心値段決定】

 ソニーフィナンシャルグループ(8729)の東証プライムへの新規上場が承認されました。ここでは、ソニーフィナンシャルグループのIPOに関する基本情報から投資分析AIによる初値予測など、詳細なデータをどこよりも早く公開します!!

 なお、今回上場するソニーフィナンシャルグループ(SFGI)の株式は、ソニーグループ(ソニー)株主に現物配当(パーシャル・スピンオフ)されるため、一般的なIPOで実施される証券会社による株式購入の募集、並びに個人投資家向けのIPO抽選はありませんので注意してください

【パーシャル・スピンオフの概要】

パーシャル・スピンオフの概要
(画像:ソニーグループHP

0目次

  1. 企業の基本情報
    1. 企業概要(事業解説)
    2. 沿革(代表者)
    3. 財務データ(業績、売上内訳、比率分析)
    4. 株主の状況(現在の株式総数と株主構成)
  2. IPOの基本情報
    1. 公開株数(上場後の株式総数と株主構成)
    2. 幹事証券と抽選本数(引受株式、抽選割合)
    3. スケジュール
  3. IPOの評価と初値予想
    1. IPO所感(評価、抽選スタンス)
    2. 初値予想と結果(条件、初値予想、AI予測)

1企業の基本情報

企業概要 

 事業内容は、『生命保険、損害保険、銀行業等』となっています。

会社名ソニーフィナンシャルグループ(423A)
所在地東京都千代田区大手町一丁目9番2号
設立日2004年4月1日
従業員数13,649人
業種保険業

【企業サイト】
ソニーフィナンシャルグループ公式サイト
https://www.sonyfg.co.jp/

事業解説
 ソニー生命、ソニー損保及びソニー銀行を中心に構成された金融持株会社で、その他にも、介護事業を統括する持株会社ソニー・ライフケア及びベンチャーキャピタル事業を担うソニーフィナンシャルベンチャーズが連結の範囲となっています。中核事業のソニー生命では、保険・金融のプロフェッショナルである「ライフプランナー」5,700人超が在籍し、顧客の描くライフプランに応じた保障プランをオーダーメイドで設計します。

沿革 

ソニーフィナンシャルグループのトップメッセージ

代表執行役 遠藤 俊英

 グループのコアであるソニー生命は1979年の創業以来、商品本位の販売ではなく、コンサルティングに基づくカスタムメイドな保険商品の提供により、お客さまに新たな価値を提供し、業界に新風を巻き起こしてきました。

(引用:ソニーフィナンシャルグループHP
2004年3月
ソニー㈱(現 ソニーグループ㈱)が金融庁より保険業法に基づく保険持株会社の設立及び銀行法に基づく銀行持株会社の設立認可を取得
2004年4月
ソニー㈱(現 ソニーグループ㈱)からの会社分割によりソニーフィナンシャルホールディングス㈱(当社)を設立傘下にソニー生命保険㈱、ソニー損害保険㈱、ソニー銀行㈱を置く
2007年6月
ソニー銀行㈱が子会社として「ソニーバンク証券㈱」を設立(2012年8月、全株式を譲渡)
2007年8月
ソニー生命保険㈱がエイゴン・グループとの折半出資により「ソニーライフ・エイゴン・プランニング㈱」を設立(2009年8月、生命保険業免許を取得し「ソニーライフ・エイゴン生命保険㈱」に商号変更)
2007年10月
東京証券取引所市場第一部に株式を上場
2009年10月
ソニー生命保険㈱がエイゴン・グループとの折半出資により再保険会社「SA Reinsurance Ltd.」を設立(2023年3月清算結了)
2011年7月
ソニー銀行㈱が㈱スマートリンクネットワークの株式を取得(2015年4月「ソニーペイメントサービス㈱」に商号変更。2024年1月に株式を一部譲渡し、持分法適用関連会社化)
2012年12月
ソニー生命保険㈱が子会社Sony Life Insurance (Philippines) Corporationの全株式を譲渡
2013年11月
介護付有料老人ホームを運営するシニア・エンタープライズ㈱の全株式を取得(2014年4月よりソニー・ライフケア㈱の傘下に置く。同年10月「ライフケアデザイン㈱」に商号変更)
2014年4月
会社分割により介護事業を統括する持株会社「ソニー・ライフケア㈱」を設立
2015年5月
ソニー・ライフケア㈱が㈱ゆうあいホールディングスの株式を取得(2017年8月、ゆうあいホールディングスグループは会社統合を行い「プラウドライフ㈱」に商号変更)
2018年7月
投資子会社「ソニーフィナンシャルベンチャーズ㈱」を設立
2018年10月
ソニーフィナンシャルベンチャーズ㈱がグローバル・ブレイン㈱との共同出資により「SFV・GB投資事業有限責任組合」を設立
2020年1月
ソニー生命保険㈱がソニーライフ・エイゴン生命保険㈱(2020年4月「ソニーライフ・ウィズ生命保険㈱」に商号変更)及びSA Reinsurance Ltd.を完全子会社化
2020年8月
ソニー㈱(現 ソニーグループ㈱)による当社株式等に対する公開買付けにより東京証券取引所市場第一部上場廃止
2020年9月
ソニー㈱(現 ソニーグループ㈱)が当社を完全子会社化
2021年4月
ソニー生命保険㈱がソニーライフ・ウィズ生命保険㈱を吸収合併
2021年10月
ソニーフィナンシャルホールディングス㈱からソニーフィナンシャルグループ㈱に商号変更
2024年9月
ソニーフィナンシャルベンチャーズ㈱がグローバル・ブレイン㈱との共同出資により「SFV・GB2号投資事業有限責任組合」を設立
2024年10月
指名委員会等設置会社へ移行
2024年12月
「㈱justInCase(現 非連結子会社)」の全株式を取得

財務データ 

 2025年3月期の事業収益は26,187億円で、構成比はセグメント別に、生命保険88.5%損害保険6.4%銀行4.5%その他0.7%となっています。

 前期(25.3)は生命保険事業での運用益減で収益が減少した一方で、併せて価格変動準備金の取崩しを実施したことで利益は上昇し、前期比で収益は△24%減最終は788億円で着地しました。

 今期(26.3)は損害保険事業で保険料改定効果により損害率が改善する見込みであることなどから、収益は△100%減最終は820億円を見込んでいます。1株利益は11.47円配当は3.5円予想としています。

▌主要な経営指標等の推移

決算期2021/32022/32023/32024/32025/3
収益22,07321,90121,37734,50326,187
経常益7737991,224544449
最終益472411,185412788
純資産6,9176,4916,4505,9406,698
総資産170,193190,329200,198220,838233,709
※単位は億円、連結決算。

▌セグメント別の収益内訳(2025.3)

▌BPS(1株純資産) / EPS(1株利益)の推移

※株式分割/併合がある場合は遡及し算定。

▌生命保険事業

 日本は世界有数の保険大国(市場規模はアメリカ、中国に次いで世界第3位)といわれていますが、近年では少子高齢化や人口減、ライフスタイルの変化などで保険販売が伸び悩んでおり、国内の保険契約数はほぼ横ばい、保険の契約金額は緩やかに減少しています。(グラフ❶)

 そうした事業環境にあってソニー生命の24年度業績は、保険の新契約高は11兆1,883億円、新契約年換算保険料は1,808億円、保険料等収入は1兆9,105億円となり、いずれも過去最高を記録しています。また、保険契約者は417万人に達し、保有契約高は71兆9,740億円となり、1981年の営業開始以来、伸展を続けています。(グラフ❷)

 ソニー生命の保険料等収入は1兆9千億円程度で、生命保険業界では10位前後の規模となっています。また、基礎利益(保険収支+運用収支)については、直近では前期比で38%減と大幅な減少となっていますが、これは大量に保有する債券(特に超長期債)が昨今の金利上昇によって含み損になっており、今後の減損処理(保有債券の価格が大きく下落した際の損失処理)を回避するため、保有国債の売却を進めたことによるものです。(グラフ❸)

❶保険業界の契約者数/契約金額の推移

?

❷ソニー生命の契約者数/契約高の推移

?

❸主要生保の経営状況(25年3月期)
会社名基礎利益 億円保険料等収入 億円
日本生命10,109 (32.3)78,613 (▲8.6)
第一生命G6,388 (21.7)67,959 (▲9.7)
明治安田6,264 (11.7)34,172 (2.2)
アフラック4,411 (▲2.7)13,265 (2.4)
住友生命3,798 (24.3)33,753 (27.6)
メットライフ2,725 (▲7.4)28,253 (▲12.4)
かんぽ2,421 (8.1)31,548 (27.0)
プルデンシャル2,077 (▲15.3)37,662 (2.5)
T&D1,620 (28.8)25,685 (4.2)
ソニー1,151 (▲38.1)19,105 (9.6)
富国1,148 (15.4)7,721 (1.8)
MS&AD1,034 (▲9.2)18,704 (▲8.4)
朝日生命458 (50.7)4,652 (7.6)
東京海上あん398 (▲6.1)7,644 (▲2.7)
SOMPOひま286 (▲9.2)4,373 (1.0)

※カッコ内の数値は前期比(%)、一部はグループ連結。

▌比率分析

 ソニーFG連結の経常利益は、直近ではソニー生命の利益減が響きやや低迷していますが、中期経営計画では、グループ連結の修正純利益24年度の615億円から26年度には1,250億円に、修正ROE5.5%から10%以上にする目標を掲げています。

 また、安全性の観点からソルベンシー・マージン(SM)比率を見ると、ソニー生命のSM比率は1,500%を超えており、これは業界でもトップクラスの水準です。

貸借対照表 B/S損益計算書 P/L
総資産 233,709 億円経常収益 26,187 億円

有価証券
他資産等
保険準備
他負債等
純資産
保険費用
他費用等
経常利益
保険収入
他収入等
事業別の経常利益の推移

?

安全性指標
生保:SM比率保険会社の「支払余力」を示す指標で、200%以上が健全性の目安。 = 1,588.7
損保:SM比率保険会社の「支払余力」を示す指標で、200%以上が健全性の目安。 = 684.2
銀行:自己資本比率「自己資本 ÷ 総資本」で計算され、銀行の場合、海外で営業している金融機関は国際基準で8%以上、国内業務のみの営業をしている金融機関は国内基準で4%以上が必要。 = 10.3

株主の状況 

 現在の株式総数は716,058万株(新株予約権含む)で、株式保有割合は、関係会社99.8%その他0.1%となっています。なお、新株予約権分を除くと、ソニーグループが100%保有となっています。

 上場後の株式保有は現在のソニーグループ株式の保有者となるため、保有割合の高い外国人や個人投資家の動向が初値や上場後の株価形成に際し、大きな影響を与えることになりそうです。

株主名持株比率ロックアップ
ソニーグループ㈱99.84%
遠藤 俊英(社長)0.01%
髙橋 薫0.00%
坪田 博行0.00%
南 啓二0.00%
鈴木 隆行0.00%
山田 和宏0.00%
伊藤 浩気0.00%
大坪 治0.00%
長谷川 樹生0.00%
上記以外0.15%
(LPS:投資事業有限責任組合)

▌現在の株式総数と株主構成

株式総数 716,058万株(2025年9月8日現在)

?

0.099.80.1
295 万株714,936 万株827 万株– 万株
※新株予約権による潜在株式(1,122万株)を含む。

▌ソニーグループ株式の所有者割合
(2025年6月30日現在)

?

属性株数 千株持株比率
外国人3,1403,706,60160.3
金融機関1481,670,62927.2
個人・その他407,790549,2188.9
一般法人2,52549,1860.8
証券会社6028,4810.5
自己株式1145,6962.4

2IPOの基本情報

公開株数 

 SFGI株式の新規上場に当たり、公募・売出しは実施せずダイレクトリスティング方式により上場する予定です。ダイレクトリスティングによる上場は、2000年以降では日本初になります

公募株資金調達などを目的に企業が新たに投資家を募集する株式。0 株
内訳(新規発行) 公募株のうち、上場により新たに発行する株式。0 株
(自己株式) 公募株のうち、自社で保有する自社株式。0 株
現物配当株ソニー株式1株当たりSFGI株式1株が交付されます。5,993,900,920 株
内訳(現物配当) ソニー株式1株当たりSFGI株式1株が交付されます。5,993,900,920 株
(OA) 売出株のうち、公募・売出しの数量を超える需要があった場合、証券会社が対象企業の大株主等から一時的に株券を借りて、公募・売出しと同一条件で追加的に投資家に販売する分。公募・売出し数量の15%が上限。0 株
公開株新たに証券取引所に上場される企業の株式。OA分の株式を含む上場される株式の上限。5,993,900,920 株

(IPO指標)

  時価総額 上場時の想定時価総額。上場時の発行済み株式数と想定価格から算出。  資金調達 IPOにより企業が新たに調達する資金額。公募株数と想定価格から算出。資金調達額が大きいほど事業拡大にプラスに働くため、IPOの評価は高くなる。 OR オファリング・レシオ(OR)。発行済み株式数のどの程度を株式市場に放出するかを示す指標。一般的にORが低いほど株式の「レア度」が高まり、初値が高くなりやすい。20~30%が平均値。  公募比率 公募・売出し総株数に占める公募株の割合(OR分除く)。公募比率が高いほどIPOが事業拡大にプラスに働くため、IPOの評価は高くなる。
10,724 億円 億円
※時価総額は「板中心値段」より算出。

▌上場後の株式総数と株主構成

???

0.016.10.183.7
※新株予約権による潜在株式(11,218.4千株)を含む。

幹事証券と抽選本数 

 今回の幹事取引参加者は野村證券となっていますが、株式の公募・売出しはないため、証券会社によるIPO抽選の予定はありません

スケジュール 

上場承認日9月8日(月)
ソニー株権利付最終日9月26日(金)
上場日(権利落ち日)9月29日(月)
SFGI株配当基準日9月30日(火)
SFGI株配当効力発生日10月1日(水)
SUNMONTUEWEDTHUFRISAT
914915916917918919920
921922923924925926927
928929930101102103104
10510610710810910101011
1012101310141015101610171018

( ソニー株権利付最終日 SFGI株上場日 )

【パーシャル・スピンオフのスケジュール】

パーシャル・スピンオフのスケジュール
(画像:ソニーグループHP

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Rating
IPOの評価と初値予想

▌注目度・業績評価

 ソニーGの金融部門を担う中核子会社で。23年度の税制改正で認められた「パーシャルスピンオフ」という一定の要件を満たせば実質非課税で分離できる制度を使って上場する初めての事例となり、注目度はかなり高いといえます。ここ数年は金利上昇が生保事業における債券偏重の運用に逆風となり基礎利益は減少も、保険契約高と年換算保険料は増加しており、今後も事業規模は安定的に増加していくことが期待できます。

▌需給・価格評価

 IPOとしては超大型案件で、上場時の株主はSFGI株を現物配当されるソニーG株主となるため、特にすぐに現金化したい個人投資家などが多い場合には、売りが殺到することが予想されます。一方で、SFGIは株式の需給状況に対する影響緩和のため、29日から総額1,000億円の自社株取得枠を設定しています。いずれにしても、流通参考値段を参考に東証が決定する最初の板中心値段がいくらになるかによって、需給が大きく左右されそうです。

板中心値段決定(9/22)
 東証からSFGIの新規上場日の初値決定前の気配運用について、板中心値段を150円(流通参考値段)とする旨の発表がありました。この板中心値段を基準にすると、SFGIのPERは13.1倍、配当利回りは2.3%です。SFGIと同規模の生保(T&D、MS&AD)の株価と比較しても、やや配当利回りが低いものの、さほど割高/割安感はありません。ただ、株価水準がかなり低いため、個人投資家の買い需要が強く出る展開も予想されます。

期待度評価点
 7.0 /15点
4以上 積極参加 2~3 参加 1 不参加

《IPOの評価指標》

 金融G  成長率 今期(26.3)の金融Gの経常利益の前年比。 PER 板中心値段を基準にした株価収益率。 PBR 板中心値段を基準にした株価純資産倍率。 配当 板中心値段を基準とした配当利回り(=年間配当予想/株価)。
SFGI171.713.11.62.3
T&D12.315.81.33.4
MS&AD-13.28.91.34.6
※板中心値段を基準に計算。下段は同業同規模企業の数値。
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初値予想と結果 

 初値決定前における上場日の最初の板中心値段については、幹事取引参加者である野村證券が提出する流通参考値段を参考に、東証により決定されます

 また、初値決定前の気配運用は、「上限が板中心値段 × 2.3 倍」、「下限が板中心値段 × 0.75 倍」にて行われ、最終的に投資家のSFGI株式に対する需給に基づき、板寄せ方式を通じて初値が決定します。

板中心値段決定(9/22)
 板中心値段は150円に決定しました。これにより上場日の値幅は、上限が345円下限が112.5円になります。

初値予想
(板中心値段比)
160円(9/22予想)
+10円 / +6.7%
板中心値段流通参考値段を参考に東証が決定。150円
初値 証券取引所に上場後、最初に取引が成立した値段。
(板中心値段比)
-円
(-円 / -%)

【SFGI株式の株価形成】

パーシャル・スピンオフに関する説明資料
(画像:ソニーフィナンシャルグループHP

(データ引用:日本証券取引所 新規上場会社情報
















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