フィットクルーの初値は公開価格を３６％上回る、今後の株価展望は？

　きょう東証グロース市場に新規上場したフィットクルー<469A>は、公開価格と同じ2,200円のカイ気配でスタートし、その後気配値を切り上げ、10時5分頃に公開価格を800円(+36.4％)上回る3,000円で初値をつけました。

　初値を付けた直後から買いが集まり、一時3,350円まで買われるも、その後は売られ、最終的に終値2,617円で上場初日の取引を終えました。また、この日の出来高は202万株でした。

　本日初値を付け、無事上場を果たしたフィットクルーですが、株価が今後上昇していくのか、それとも下落するのか、簡単に予想していきたい思います。

　一般的にIPO銘柄は上場後に値下がりすることが多いと言われていますが、実は上場後に株価が大きく上昇していく銘柄も多くあります。ここでは特に、過去に上場した同種のIPO銘柄の値動きから、フィットクルーの今後の株価について探っていきます。

　初値の水準(初値騰落率)は上場後の株価に大きな影響を与えます。株価は投資家の将来への『期待』に左右されますが、その『期待』の影響を最も受けた状態で付いた株価が初値とするならば、初値が高いほど投資家の『期待』は既に高い状態のため、高値警戒感から上場後は値下がりする可能性が高くなります。

　フィットクルーの初値は公開価格比で+36.4％になりましたが、2012年以降のIPOで初値が公開価格比で10~50％未満だった256銘柄の１年後の騰落率(初値日終値基準)を見ると、平均(μ)は+9.3％、中央値(Me)で-10.8％となっています。また、１年後に初値日終値より上昇していた銘柄の割合(勝率)は39.8％と、セカンダリーではやや苦戦している状況です。

　業種や事業内容も上場後の株価に大きな影響を与えます。IPOでは事業の新規性や話題性、規模が初値の決定に大きな影響を与えますが、上場後は事業が地味でも業績が堅調に拡大していたり、大型株でも配当を出すような安定銘柄であれば株価は緩やかに上昇していきます。

　フィットクルーと同じサービス業（その他）の銘柄(2012年以降上場の110銘柄)に限定して１年後の騰落率(初値日終値基準)を見ると、平均(μ)は+9.9％、中央値(Me)で-20.8％となっています。また、１年後に初値日終値より上昇していた銘柄の割合(勝率)は34.5％と、セカンダリーではやや苦戦している状況です。１年後に最も上昇したのは19年6月上場のユーピーアール(7065)で+401.3％、最も下落したのは22年11月上場のウェルプレイド・ライゼスト(9565)で-82.1％です。

　過去のIPOのセカンダリー状況を見る限り、やや苦しい展開が予想されます。

　なお、初値(3,000円)は当サイトの予想(2,700円)とほぼ同水準で、予想通りの結果となりました。また、AIの予測値は3,780円でした。初値寄り付き直後は大きく値を上げたものの、直後に初値を大幅に下回る水準まで下げ、終値も初値から10％超の下落となったことから、短期的には売り圧力の強い展開が続きそうです。

　今期(25.11)の業績予想は、前期比で売上高は+20.1％の2,947百万円、最終損益は+491.3％の261百万円となっています。フィットネス市場は人々の健康意識向上に伴い、コロナ禍を経て、より一層拡大しており、特に低価格帯ジムが急拡大していますが、一方でフィットネスクラブの倒産も増えており、まさに群雄割拠の時代といえます。そんな中、女性専用のパーソナルトレーニングジムで事業拡大を急速に進めており、今期も７店舗を開店するなど、継続的な成長をしており、利益も安定的に確保していることから、先行きは比較的明るいといえます。

　現在の株価水準は、初値でPER10.8倍と業種平均30.9倍(サービス業/グロース)と比べてかなり割安な水準です。

　以上を踏まえると、短期的な値動きはともかく、向こう１年という期間で考えれば、2,000~3,000円前後で推移していくものと予想します。