日本人は貯蓄が大好き?【投信 vol.3】

1資産運用の必要性

 「貯蓄から投資へ」。このスローガンが国の基本方針となってからしばらく経ちます。このスローガンに込められた政府の想いは、端的にいえば「銀行の預金や貯金をやめて、株式や債券、投資信託を買いましょう」、つまり『投資をしよう』というものです。

 では、どうして「投資」が求められているのでしょうか?ここではその背景を少し見ていきましょう。

日本人の国民性 

▌日本人は貯蓄が大好き?

 日本人はとにかく『貯蓄』が大好きと言われています。日本の個人の金融資産は2021年末時点で初めて2,000兆円を突破しましたがそのうち50%以上を現金・預貯金で保有しています。これは、米国の13.3%や欧州の34.3%と比較しても突出して高い割合です。逆に、株式や債券、投資信託といった「資産運用」の割合は15%程度しかありません。日本人がそもそも貯蓄が好きなのか、それとも投資が嫌いなのか、もしくはその両方か、いずれにしても日本人が投資より貯蓄に重きを置いていることは確かなようです。

 ※日本銀行「資金循環の日米欧比較」(2021.8.20)より作成。

▌日本人の貯蓄好きは、国民性?

 日本人は貯蓄好きな国民性と言われています。では、そんな貯蓄好きな日本人に投資を勧めるとしたら、どのような言葉を掛けたらいいでしょうか。国民性を表す有名なエスニックジョーク「沈没船ジョーク」を参考に見てみましょう。

 世界各国の資産家が集まる投資レセプションで、証券会社の営業担当者は投資を勧めます。ここで、様々な国の国民性を熟知している営業担当者は、各国の資産家にそれぞれ以下のような言葉を囁きました。

アメリカ人投資すればヒーローになれますよ
イギリス人紳士は投資するものです
ドイツ人ルールなので投資してください
イタリア人投資すれば女性にモテます
日本人皆さんはもう投資していますよ

 日本人はとにかく、「誰かに勧められたことや、みんなが既にやっていること」に取り組むのが大好きな国民です。つまり、投資でも「みんなもやってるよ」と言われると、同調性の強い日本人は、「自分もやらないと」という思いに駆られ、投資に積極的になるかもしれません。しかし別の視点で言えば、日本人が投資に対して消極的なのは、お金の使い方(資産配分)について「自分で考え、リスクを取って行動し、その結果に対して自ら責任を負う」という思考や行動を敬遠しがちな国民性が影響しているとも言えます。

 子どもの頃にもらったお年玉は使うことなく、親に言われるがままに「貯金」してた人が多いのではないでしょうか。「なんで自分の欲しいモノを買えないのだろう?」「貯金すると自分にどんな良いことがあるのだろう?」と少しばかりの疑問を抱きながら…。また、そうして育った子どもも親になれば、また自分の子どもに同じように貯金することを勧め、こうして知らず知らずに「お金は貯金するもの」という文化が根付いた結果が、日本人の貯蓄癖に繋がっているのかもしれません。

沈没船ジョーク

 多くの国の人が乗った豪華客船が沈没しかかっています。しかし、乗客の数に比べて、脱出ボートの数が足りず、船長は乗客を海に飛び込ませようとします。様々な国の国民性を知り尽くした船長は、それぞれの国の乗客に対して、次のように言って説得しました。

アメリカ人飛び込めばヒーローになれますよ
イギリス人紳士はこういう時に飛び込みます
ドイツ人ルールなので飛び込んでください
イタリア人飛び込んだら女性にモテます
日本人皆さんはもう飛び込みましたよ

▌貯蓄でもお金がふえた時代があった?

 今の若い人には貯蓄してお金が増えるなんて夢物語のように聞こえるかもしれませんが、過去には、郵便局(現在のゆうちょ銀行)や銀行にお金を預けるだけで、預けたお金が10年で2倍なんていう、夢のような時代がありました。

 仮に、郵便局に100万円を金利7%で貯金したら10年後にはいくらになるでしょうか?答えは196万7,151円、約200万円です。貯金したお金が、単純に10年で2倍になって返ってきます。しかも、貯金なのでリスクはありません。今の時代、リスクゼロで10年後に2倍になってお金が返ってくる金融商品を目にしたら、詐欺を疑ったほうがいいかもしれません。でも、実際にそんな時代がありました。

 ※ゆうちょ銀行の定額貯金(期間2年以上)の金利。

 ちなみに今、郵便局に100万円を預けたら、いくらぐらいになると思いますか?現在のゆうちょ銀行の定額貯金の金利は0.002%なので、これを元に複利計算すると、10年後には100万200円になります。えっ、200円!?さすがに計算間違いでは、と疑いたくなる程の低さですが、間違いではありません。100万円を10年間預けても、利息はたったの200円です。郵便局に行くのに電車を利用したら、10年間の利息分は簡単に吹っ飛んでしまいます。

 また、バブルの頃には貯金や預金だけでなく、割引金融債や利付金融債、貸付信託といった金融商品もありました。今では知らない人も多いかもしれませんが、いずれの商品もリスクは小さく、利率は定期預金よりも高いため、多くの国民が預貯金の延長線でこうした金融商品にお金を投じていました。

2超低金利時代に必要なこと

 90年代に入りバブルが崩壊すると、それまでの状況は一変します。株価は暴落し、土地の価格や住宅価格の急落で金融機関の不良債権が拡大し、多くの金融機関が破綻に追い込まれました。こうした危機的状況に対処するため、日本銀行はゼロ金利政策を導入しましたが、ここから日本の長く深い超低金利時代が始まります。

 超低金利時代の幕開けとともに、郵便局や銀行にお金を預けているだけでは、お金はなかなかふえなくなってしまいました。先ほどの例でも見たように、貯金や預金でふえるお金は雀の涙より小さいものです。過去にあったような、お金を10年預ければリスクゼロで2倍になるという時代は、もうやって来ないでしょう。なにせ今や『マイナス金利』なんていう言葉も飛び交う時代なのです。

 超低金利時代に貯金だけではお金がふえない、それでも豊かな老後を送るためにお金をふやしていかなくてはならない、私たちはそんな厳しい状況に直面しています。

 こうした状況で私たちに求められていることは、お金を預貯金に置いておくのではなく、お金を働かせることでさらにお金をふやす、『資産運用』の考え方です。この『資産運用』こそが、超低金利時代を生き抜き、そして豊かな老後を送るための大きなカギとなるのです。

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